誕生時のトラブルで脳性麻痺となった男の子:パオロの父である著者が実人生をベースに書いた半自伝的小説です。
2000年に刊行され世界的にもベストセラーとなり、イタリア国内では最高の文学賞を受賞しています。
10年ほど前に読んだのですが、重いテーマと哲学的な言葉がちりばめられた文体にもかかわらず、文章の一つ一つを夢中で追いながら読んだ記憶があります。
パオロが重い障害を持って生まれた日から、父である著者が絶望の中、さまざまな出来事や周りの言葉に一喜一憂する様子、パオロの成長とともに到達する受容への長い道のりが書かれています。
周りの人々の中には良い人も悪い人もいて、そのたびに著者は希望や怒りを持つのですが、その中でも親切で控えめで思慮深くパウロに接するボランティアのサポートに感謝しています。
また、経験豊かなある一人の医師からの言葉が力となります。
最終ページの、父親が遠くからわが子パウロを眺め、決意する場面の描写の美しさに圧倒され、再生の瞬間に静かに引き込まれるような不思議な感覚を覚えました。
医療や介護のお仕事をしていると、お客様だけではなくその方のご家族へのグリーフケアについても考えさせられる場面を経験するかと思います。
どのようなサポートが必要か考えるうえで一読する価値のある本かと思い紹介させていただきました。