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COLUMN スペシャルコラム
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スペシャルコラム :
高齢者のエンドオブライフケアを考える

多職種が連携しているから、
良いお看取りができる。

Part1
~施設看護師の仕事は楽しい~

ターミナル期を迎えると、高齢者の方は意思の表現が難しくなります。そのため、ご本人の意志をどのように尊重するべきか、医療や介護の現場で議論になることが多々あります。ヒルデモア/ヒュッテでは多職種が連携してチーム一丸となって、最期の時間をご自分らしく送っていただけるように取り組んでいます。
認知症ケアについて研究されている群馬大学大学院の伊東美緒教授、ヒルデモア/ヒュッテの村上看護師、ヒルデモアの望月ケアスタッフが、ターミナル期における多職種連携の重要性について語り合いました。

  • 伊東先生
  • 村上看護師
  • 望月ケアスタッフ

言葉で意思を表現できなくても、
目線や声かけの工夫で
持っているものを引き出せる。

村上看護師:先日、伊東先生の学会に参加させていただきました。認知症や寝たきりになって自分から言葉が発信できない人に対して、目線や声かけなどで寄り添う空間を作っていけば、その方の持っているものを引き出せるというお話がとても印象深かったです。最期のお看取りケアにも通じる考え方だと感じました。
自分が働いているヒルデモア/ヒュッテではどうだろう?と考えると、意志を表現することが難しくなったご入居者に対しては、目線を合わせるようにしたり、声かけを工夫したりしています。すでにある程度実践できていると思いましたが、もっと寄り添ってさらにご本人の意向を引き出していきたいと考えています。

伊東先生:記憶に残っている看取りの事例はありますか?

村上看護師:肺がん末期で余命半年と診断され、当時住んでいたサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)からヒルデモアに移りたいと希望されている方がいました。最初にスタッフ間で話し合ったときには、受け入れは難しいのでは?という意見が多かったんですね。
信頼関係を作るのには時間がかかるのに、余命が半年と言われている方が望む暮らしのお手伝いができるかどうか、ケアスタッフは不安に感じていました。看護師も、ヒルデモアは医療機関ではないので、痛みや辛さを取り除くことができるか不安でした。
しかし、ご本人にお会いしたら意志ははっきりしていて、私たちの目を見て「24時間看護師がいて安心感があるヒルデモアに入りたい」と言ってくださったのです。それならば頑張ろうと思い、ケアスタッフは癌の進行や対応について看護師が勉強会をし、看護スタッフは医療機関との打ち合わせを行い、不安を消した状態でその方を受け入れました。インカムで「お元気そうなので、今なら動けそう、散歩に行けそう」などと情報を共有し、屋上散歩が出来ました。また、居室に電子ピアノを運び、音楽療法士でもある5階アクティビティスタッフが関わり、喜ばれる場面もありました。
入居後3ヶ月で亡くなってしまったのですが、亡くなる1時間前に、冗談っぽく「サイナラ、サイナラ」と言ってくださって。ああ、満足する最期を迎えていただけたのだな、と感じました。
亡くなった後のカンファレンスでも「余命半年と診断されている方を受け入れるのは初めてのことだったけど、やれることはできたのではないか」と、関わったスタッフがみんな納得することができました。すごく印象に残っています。

望月ケアスタッフ:私が印象に残っているのは、ともに認知症だったご夫婦です。認知症の進みが早かったご主人が最初に入居し、その後に奥さまが入居されました。私はもともと入居からお看取りまでケアしたいと考えていたので、CP(コンタクトパーソン)に手を上げ、お二人ともCPとして関わらせていただきました。
入居前までは自立した状況で二人暮らしをされていたので、それをできるだけ崩さず、居室も“介護する部屋”にはしたくないと考えていました。それを看護師など他のスタッフにも伝えて、少しでもお二人がこれまでと変わらず過ごせるようにケアをしていました。
ご主人が先にお亡くなりになり、奥さまも徐々に体力が落ちて、食べることも難しくなってきたのですが、ご家族は「食べることが大好きな人。好きなものを持ってくるので、できるだけ食べてほしい」とのご意向があり、キッチンスタッフと相談して本人が食べたいものを食べさせてあげるようにしました。だんだん最期のときが近づいてきても、キッチンスタッフが1日に1回でも形のあるものを食べてほしいと提案してくれたりして、最期まで食べることを続けることができました。
お亡くなりになったとき、悔いはまったく残っていなくて、カンファレンスで他のスタッフとも「できることはすべてやった」と確認し合いました。もちろん、とても悲しかったのですが、充実感を感じることができたお看取りで、今思い出してもその方には感謝の気持ちでいっぱいです(涙)。

伊東先生:素晴らしいですね。つい忙しいからと後回しにしてしまうと後悔が生まれることがありますが、それがなかったのはできることをしっかりやっているからですよね。

病院と施設では、看護師の役割は違う。
多職種連携ができると、
施設看護師の仕事は楽しい。

伊東先生:看取り期に入ると、看護師とケアスタッフの間で意見の違いが出ることがあるとよく聞きますが、ヒルデモア/ヒュッテではいかがですか?

望月ケアスタッフ:水分問題が一番大きいですね(笑)。看護師から1日1000ccの水分が必要と言われますが、食事には口を開けるけど、水分は口を開けないご入居者もいます。大切なことだとはわかっていますが、個人差があります。飲まないなら他のところで調整していけば良いと思っています。

伊東先生:病院と介護施設では、看護師の役割が違います。病院では医師よりも看護師のほうが患者に近いので、医師に言われたことをそのままやるのではなく、日頃の患者の様子を見て医師に伝え、どうしたら良いか医師と一緒に考えますよね。しかし介護施設では、ケアスタッフの方が入居者に近いので、ケアスタッフの声を聞いて対応を考える必要があります。だからこそ、多職種連携ができると施設看護師の仕事はとても楽しくなります。
病院では命をつなぐために医師と一緒に治療にあたりますが、介護施設は治療だけではなく、苦痛がないようにケアスタッフと一緒に見守ることも必要です。

望月ケアスタッフ:ヒルデモアは多職種連携が自然とできていて、他の職種から相談されますし、こちらから相談もします。とても風通しが良いですね。たまに水分のことで揉めることはありますけど(笑)。

村上看護師:病院と違って、介護施設は“生活”です。看護師が必要だと思っても、ご入居者を一番近くで見ているケアスタッフはそう思わないこともよくあります。日頃からミニカンファレンスをして、よく話すことが大切ですね。そうすれば、お互いの考えがわかります。

伊東先生:まさにその通りで、考えをぶつけ合うことはとても大事なこと。一方で、そんな余裕がないと訴える施設看護師が多いのも事実で、「処置だけで1日が終わる」という人もいます。でも、その処置は本当に必要なのでしょうか?看護師の仕事を病院と同じように考えて施設で働くと、だんだん苦しくなってきます。
介護施設で働いている看護師は、医師の指示を聞かなくて良いので、自分で判断できます。判断したことのリアクションがすぐに返ってくるので、そこにやりがいや楽しさを感じられると良いですね。

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